うさぎを飼っていると、抱っこしたり、膝の上でなでたりしたくなることがあります。
逃げずにじっとしている姿を見ると、「気持ちよさそう」「安心している」と思うかもしれません。しかし、うさぎが動かないからといって、必ずしも触れ合いを楽しんでいるとは限りません。
2026年に発表された海外の研究では、知らない人の膝の上でなでられたうさぎに、体の緊張やストレスに関係するホルモンの増加が確認されました。今回はこの研究をもとに、うさぎに負担をかけにくい触れ合い方を考えます。
うさぎにとって抱っことはどのような体験?
うさぎは、自然界では捕食される側の動物です。
地面から体を持ち上げられ、自由に逃げられない状態になることは、捕食動物に捕まった状況と似ています。そのため、飼い主を信頼しているうさぎであっても、本能的には抱き上げられることを嫌がる場合があります。
もちろん、すべてのうさぎが抱っこを怖がるわけではありません。幼いころから少しずつ慣れている子や、飼い主の腕の中で落ち着ける子もいます。
大切なのは、「うさぎは抱っこが好きな動物」と決めつけず、その子の反応を見ながら判断することです。
2026年の研究でわかったこと
チェコとスロバキアの研究チームは、7匹の成体のメスの小型うさぎを対象に、人との触れ合いがストレス反応を引き起こすかを調べました。
実験では、うさぎを知らない人の膝の上に乗せ、10分間やさしく体をなでました。その後、唾液に含まれるストレス関連ホルモンを測定し、触れ合いがなかった日の数値と比較しています。
その結果、触れ合い後のホルモン濃度は平均で約214%増加しました。また、10分間の触れ合いのうち、うさぎは平均約8.4分を体が緊張した姿勢で過ごし、約4.2分は耳を後方へ伏せていました。
体を緊張させていた時間が長いうさぎほど、ホルモンの増加も大きい傾向が確認されています。
「なでることは悪い」と結論づける研究ではない
この結果だけを見て、「うさぎはなでてはいけない」と考える必要はありません。
今回の研究で調べられたのは、知らない人の膝の上から自由に離れられない状態で、10分間なでられる場面です。慣れた飼い主が床に座り、うさぎが自分から近づいてきたときになでる状況とは異なります。
また、対象は7匹だけで、すべて成体の未避妊のメスの小型うさぎでした。研究チーム自身も、結果をすべてのうさぎや触れ合い方にそのまま当てはめることはできないとしています。唾液を採取する時間についても、うさぎでは十分に確立されていない点が研究上の限界です。
この研究が示しているのは、人にとって穏やかに見える触れ合いでも、うさぎには負担となる可能性があるということです。
見逃したくないうさぎのストレスサイン
うさぎが触れ合いを嫌がっていないか確認する際は、ひとつの動作だけでなく、耳や姿勢、逃げようとする動きなどを組み合わせて観察します。
注意したいのは、次のような様子です。
- 体を硬くして動かない
- 耳を体に沿わせるように後ろへ伏せる
- 姿勢を低くして縮こまる
- 顔を背ける
- 何度も逃げようとする
- 抱き上げたときに激しく足を動かす
- なでる手を鼻や頭で押し返す
- 触れ合いのあと、すぐに隠れ場所へ入る
とくに注意したいのが、じっと動かない状態をリラックスと決めつけないことです。怖さから動きを止めている可能性もあります。英国の公的な飼育案内でも、体を丸め、耳を伏せて動かなくなる様子は、緊張や不安のサインとして挙げられています。
一方で、自分から近づく、頭を差し出す、体を伸ばして休む、なでるのをやめると再び手の下へ頭を入れるといった行動があれば、触れ合いを受け入れている可能性があります。
うさぎが選べる触れ合い方を大切にする
うさぎとの関係を深めるうえで重要なのは、長時間抱っこすることではありません。
飼い主が床に座り、うさぎと同じ高さで過ごすだけでも立派なコミュニケーションになります。うさぎが自分から近づいてきたら、額や耳の付け根など、その子が好む場所を短時間なでてみましょう。
途中で離れていった場合は、追いかけたり連れ戻したりせず、そのまま終わりにします。近づくことも、離れることも、うさぎ自身が選べる状態を作るのがポイントです。
無理に抱き上げるより、好物ややさしい接触を使った前向きな方法で、人との関わりを楽しいものにすることを勧めています。
来客や子どもとの触れ合いにも注意
知らない人が家に来たとき、かわいいうさぎを抱っこしてもらいたくなることがあります。しかし、来客の声や匂いだけでも警戒しているところへ、さらに抱き上げられると負担が大きくなる可能性があります。
来客には、無理に触らず、まず床に座って静かに待ってもらいましょう。うさぎが自分から近づいてきても、いきなり頭上から手を伸ばさず、匂いを確認させてから短時間なでる程度にします。
子どもとうさぎを触れ合わせる際も、大人が必ずそばで見守ります。立ったまま抱かせるのではなく、床に座った状態でやさしくなでてもらう方が、落下やケガの危険を減らせます。
触れ合い施設などで、多くの知らない人から繰り返し抱かれたり、なでられたりする状況についても、海外の動物福祉団体は見直しを求めています。うさぎが人から離れられる場所や、休める時間を確保することが重要です。
抱っこが必要になる場面もある
日常的な抱っこを好まないうさぎでも、次のような場面では体を持ち上げる必要があります。
- 動物病院へ連れて行く
- 爪を切る
- 体やお尻の状態を確認する
- 災害や緊急時に移動させる
- 薬や治療を行う
必要な抱っこまで避けてしまうのではなく、短時間で安全に行えるよう、少しずつ慣らしておくことが大切です。
持ち上げるときは、胸の部分と後ろ足・お尻をしっかり支え、体を飼い主の体に密着させます。後ろ足が宙に浮いて不安定になると、うさぎが強く暴れて背中などを傷める危険があります。前半身だけでなく後半身の体重を確実に支えることが大事です。
また、仰向けにして動かなくなる「トランス」や「催眠」と呼ばれる方法は、落ち着いているのではなく、恐怖による反応と考えられています。日常の手入れをしやすくする目的で行うことは避けましょう。
まとめ:触れる量より「安心して離れられること」
うさぎとの触れ合いでは、人間がどれだけ触りたいかではなく、うさぎがその時間をどう感じているかを見る必要があります。
2026年の研究は、知らない人の膝の上でなでられるという、一見穏やかな状況でも、うさぎに急性のストレス反応が起こる可能性を示しました。ただし、研究対象は少なく、慣れた飼い主との自由な触れ合いまで否定するものではありません。 抱っこをしなくても、床で一緒に過ごしたり、うさぎが近づいてきたときだけなでたりすることで、信頼関係は育てられます。
うさぎが自分から近づけて、嫌になったら離れられること。その選択肢を用意することが、うさぎにとってもっともやさしい触れ合い方なのかもしれません。
